名前は忘れた でも名曲だった
■好きなバンドから繋がって、また別のバンドを好きになることって、よくあることだと思います。
例えば、僕の好きなバンドにthe pillowsがあるんですけど、元はBUMP OF CHICKENから繋がって好きになったバンドでした。ある時、BUMPが【ハイブリッドレインボウ】という新曲(?)を出すらしいということで調べてみると、実はそれはBUMPの曲ではなくて、the pillowsというバンドのカバー曲だったということが判明し、そこから本家のthe pillowsを聴いてみるとハマった、という流れでした。
そして、そのthe pillowsからまた繋がって好きになったバンドがあります。それが、今回紹介したい、カミナリグモというバンドです。
僕がカミナリグモを聴くようになったのは、さかのぼって調べてみると、2014年くらいのことのようです。どういうきっかけだったかは覚えていませんが、正直に言うと…the pillowsの音楽が自分に少しずつ合わなくなってきた頃に、カミナリグモのことを知りました。
カミナリグモは、the pillowsの山中さわおさんがプロデュースしているバンドであることを何かで知り、そこからカミナリグモの楽曲を聴いてみると、めっちゃ良いじゃん!となって、そこから少しずつカミナリグモの作品を集めていって聴いていったのですが、どの作品もとても素晴らしいんです。
■そんなカミナリグモですが、今年2022年で15周年を迎えたようです。
ここでいう15周年ですが、元々はカミナリグモはボーカル・ギターの上野啓示さんのソロプロジェクトとして始まったようですが、2007年にghomaさん(成瀬篤志さん)がキーボードとして加入して2人体制になったようで、そこから15周年ということだと思います。
僕がカミナリグモにハマって聴き始めたのが、先述の通り2014年くらいのことなので、その頃のカミナリグモは、もうすでにそれなりにキャリアを積んできており、僕の知らないストーリーを歩んでいたのだと、改めて思います。
15周年を迎えたカミナリグモですが、15周年企画として、「BRAIN MAGIC RADIO SHOW!」と称して、2022年にYouTubeで月一のラジオを配信していきました。
そして、これもその企画の一環ですが、15周年企画YOUTUBEライブ「YOUR ORDER」と称して、YouTubeにてライヴを生配信しました。
ライヴの内容も、これまでの7枚の歴代のアルバムから人気の曲をファンから募集して、それに基づいてセットリストを組んでいるという、ライヴのベスト盤的な感じでめっちゃよかったんです。このライヴは、今でも見れますので、ここでも紹介しておきます↓
https://www.youtube.com/live/qThPZ8PMecs?feature=share
■ということで、個人的にもカミナリグモについて話したいと思って、記事を書きはじめました。
4th Album『MY DROWSY COCKPIT』
冒頭に載せている画像が当アルバムなんですけど、カミナリグモの作品を本格的にまとめて聴いてみようかな、と思って初めて手に取った作品が、『MY DROWSY COCKPIT』というアルバムでした。2014年当時では、手に入る作品の中では、一番新しい作品だったんだと思いますが、この作品をきっかけにカミナリグモにハマって、そこから少しずつ作品をさかのぼって聴いていきました。
だから、個人的には一番思い入れのある1枚なんですけど、先述の15周年のYouTubeライヴでは、この作品を作っていた頃を思い返して啓示さんは(視野がせまかったと語りつつ)、「精神状態も良くなかった」「これで全部終わるんだと思って作った」「自分はカミナリグモしかないから」「自分だけが必死」「(他のメンバーが)そこまで真剣な感じがしなかった」みたいなことを思っていたようです。
2016年から、カミナリグモは一旦活動を休止していしまうんですけど、僕がカミナリグモにハマった時期が2014年くらいからだったので、啓示さんのおっしゃっている、精神状態の良くなかった頃に、自分はカミナリグモを知ったんだなと、今振り返るとそう気付かされます。
■そのアルバムの表題曲【MY DROWSY COCKPIT】について。
載せている動画はライヴ映像です。ghomaさんの綺麗なピアノの旋律でイントロがはじまって、それにしっとりと啓示さんの弾き語りが乗っかるという形でAメロへと繋がり、サビで想いを爆発させるように演奏が激しさを増す、という構成になっています。
これがアルバムの原曲になると、そういう構成はさらに際立っています。イントロは機械音みたいなピコピコ音が印象的ですが、サビで激しさを増すところなんかは、ライヴ映像の演奏以上に、鬼気迫る感じで迫力があります。まぁ原曲の方はバンドサウンドなので、ドラムやエレキギターやベースの音が聞こえてくるので、派手に聴こえるのは当たり前なのですが。
先述の、啓示さんの精神状態を思い浮かべながらこの曲を改めて聴くと、歌詞はそういう想いが反映されているのだと気付かされます。
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このまま眼が覚めなくても 十分たのしんだつもり
さよなら 点滅を繰り返す 虹みたいなうた
また会えるかなぁ
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誰にも気づかれないまま 終わるよ 理解したつもり
さよなら 点滅を繰り返す 虹みたいな夢
また会えるかなぁ
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これがサビの歌詞になるんですけど、ここからも、啓示さんが語った「これで全部終わるんだと思って作った」という想いが伝わってくるようです。
”誰にも気づかれないまま 終わるよ”という言葉…カミナリグモというものが啓示さん1人のものであり、それを自分の手で孤独のまま終わらせるという想いの表れですかね。
あと、ここに出てきている”虹みたいなうた”という表現も印象に残ります。この言葉から、僕は2つのことを思いました。
まず1つは、バンド名が”カミナリグモ”ということで、漢字で書くと当然”雷雲”ということになるんでしょうけど、ここからは”雷”や”雲”、”雨”、”嵐”みたいな…何て言うか天候が崩れた感じのイメージが膨らみます。それに対して、”虹”という言葉からは、雨が上がり、崩れた天候が回復しているイメージですよね。
安易に表現するならば、絶望が希望が変わる、みたいな感じ…というより、”虹”っていう言葉や概念に込められる想いっていうのは、いつだってそういうものだと思います。なので、ここでいう”虹みたいな歌”とはそのまま、カミナリグモ(上野啓示さん)がこれまで希望を込めて歌ってきた歌、と解釈することができるかもしれません。そんな歌に、”また会えるかなぁ”と歌っているところも、また泣けてきますね。
そしてもう1つは、啓示さんが敬愛するthe pillowsについてです。the pillowsの名曲に、【ハイブリッドレインボウ】という曲がありますが、”虹みたいな歌”は、それにもかかっているのかな、とも思ったりしました。
【ハイブリッドレインボウ】の個人的な解釈としては、あまりバンドとして良い状態ではなかったであろうthe pillows、そのボーカルの山中さわおさんが、それでも、バンドや観客たちとロックンロールを鳴らす想いを爆発させた曲…という感じなのですが、これが”虹みたいな歌”に当てはまるのかな、と思いました。
とすると、【ハイブリッドレインボウ】みたいな曲に”また会えるかなぁ”…つまり、自分たちもそういう起死回生の曲を生み出すことができるかなぁ(生み出したい)と歌っていると解釈できます。
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コクピットで眠るよ 少し寒いし
タイマーをセット 星とまばたきゲーム
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コクピットでうたうよ キミを想って
タイマーリセット 生まれ変われるように
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Aメロの歌詞ですが、ここに”コクピット”という言葉が出てきています。ちなみに、DROWSYの意味は、眠い、眠そうな、という意味です。
そこにCOCKPITという言葉が引っ付き、曲名の意味としては、まず安易に訳すと、”私の眠たいコクピット”ということには一応なります。
COCKPITで操縦しているのは、他でもない上野啓示さんであると想像ができます。暗闇を飛び続ける宇宙船の中に、1人で孤独と戦いながら操縦桿を握っている感じでしょうか。
そして、DROWSYが意味することは、おそらくカミナリグモがうまくいかなくなっている、終わらせよう(眠るという言葉で表現)と思っている、というそういう啓示さんの想いを反映させたのだろうと解釈できます。
ずっと長いこと飛び続けてきて、もう前も後ろも真っ暗で見えなくなっている。進むことも戻ることもできない状態の中で、”タイマーリセット 生まれ変われるように”…時間を止めて眠りにつく、とそういうことですよね。
ただし、”眠る”なので、その対義にあるのは、いつかは”起きる”ということ…そういうところから、個人的にはコールドスリープ的なものをイメージして聴いています。未来に何らかの希望を託して眠りにつく、みたいない表現が近いな、と思っています。
■何か、こうやって(勝手に)書いていくと、ずっとマイナスのことを書くだけになってしまいますが…
ただ、これだけは言いたいのは、先述したとおり、僕はこのアルバムでカミナリグモを本格的に聴きはじめて、その素晴らしさに気が付いたので、本当に思い入れがあるんです。啓示さんが、色々と苦悩しながら作ったこのアルバムの良さ、カミナリグモの素晴らしさは、間違いなく届いていますよって、なんかエラそうですけど大きな声で伝えたいんです。
結構、極限状態の時にできる名曲や作品ってあるじゃないですか、追いつめられたときに、とんでもない魂のこもった名曲や作品ができるっていうか…例えば、作詞に9ヶ月かかったと言われているBUMP OF CHIKCKENの【ロストマン】、メジャーデビューを去るSUPER BEAVERがその去り際に作ったアルバム『SUPER BEAVER』、スピッツのアルバム『ハヤブサ』や楽曲【放浪カモメはどこまでも】なんかも、そういう側面があるんじゃないかと思います。
バンドや作詞・作曲者は、とても苦労したのでしょうけど、そういう状況で作った曲だからこそ、聴いた者の胸を打ち、感動を与えるのだと思います。
この【MY DROWSY COCKPIT】も、そういう曲だと…悩みもがきながらやってきたことは、絶対に間違いはなかったですよと、本当に偉そうなんですけど、啓示さんに伝えたいです。