■前回の記事では、新しいギターを買ったという話をしたんですけど、その中では触れただけだった、大学時代のサークル活動について、もうちょっと詳しく話をしたいと思います。
■大学時代、僕は音楽のサークルに入っていました。音楽と言っても、軽音楽や吹奏楽などではなく、いわゆる”弾き語り”の音楽を楽しむサークルでした。名前もそのまま”弾き語りサークル”で、言葉通り、アコギの弾き語りを主として、ピアノ、ハーモニカ、ジャンベ、カホン、時にはベース、時にはアカペラなど、そういう楽器や音楽を楽しむことが目的でした。
僕自身、高校の頃からアコギにはそれなりに慣れ親しんでいたので、大学のサークルに入った頃には、それなりにコードは追える感じで弾くことができていたので、サークルに入ってすぐに、仲間や先輩と話が合い、割とすぐに打ち解けたことを覚えています(多分…)。
大学時代の頃の思い出といえば、このサークルでの活動と、居酒屋アルバイト(こっちの方は結構エグイ話とかもあるのですが…)で占められています。このサークルがね、また結構本格的に活動していたんです。
■活動のメインとしては、学内での定期ライヴでした。確か、新歓ライヴ、梅雨ライヴ、文化祭ライヴ、紅葉ライヴとか、クリスマスライヴ、卒業ライヴ…あとはミニライヴなんかも合わせると、年に8回くらいですかね、結構頑張って年中やってました。
普段は、ホールに集まって各々が練習をしているんですけど、そろそろ次のライヴの時期かぁ…となったら、ライヴに出演したい人は曲を出し始め、通称”お披露目”という、メンバーたちの前での曲の披露を経て、曲順などを決め、いざ本番!という感じでした。学内でのライヴを軸として、サークルが年中回っていたようなものですかね。
あとは、外部での活動も良い経験になりました。地域の施設やイベントなどにも駆り出されて、ボランティアでライヴしたりしてました。障がい者施設のクリスマス会に呼ばれて歌ってみたり、外国人が集まるバザーみたいなところで歌ってみたり、町のお祭りで歌ってみたりと、色んな依頼を受けて活動をしたりしていました。
このサークルでの活動は、大人になった今でも、結構自分の核になっていて、僕自身は3回生の頃にサークルの部長を務めたんですけど、それは楽しかっただけじゃなくて、チームをまとめる難しさなんかも体験したことで、今の自分の大部分が形成されていると思っています。何か、根拠もない自信にもつながっている部分もあるかもしれません。あれだけ大きなサークルの部長をやってたんだ、と。自分の数少ない、誇らしい過去の栄光なんじゃないかと思います。
■そんなサークルの活動には、やはり同じ想いを持ったサークル仲間が集い、日々音楽の話をしたり、飲みに行ったり飯食ったりと、自分にとっても特別な人間関係になりましたが、そのサークル仲間の一人…同じ学年の仲間に、友人Mが居ました。
友人Mを一言で説明すると、ピアノも弾けて、ギターも弾けて、おまけに歌がめちゃくちゃうまいという、スーパープレイヤーでした。特に、友人Mの歌声については、サークル随一という感じでした。自分もこんな風に上手に歌えれば、と思う憧れの歌声でした。
友人Mの最初の印象は、独りでピアノで弾き語っている姿でした。僕らの練習場所にはピアノが置いてあったんですけど、サークルに属しているピアニストたちがそのピアノで練習をしている光景をよく見かけました。友人Mもその一人で、一番最初に見かけた友人Mが、ピアノ弾き語りを行っている姿でした。
また、友人Mからは色んな音楽を教えてもらいました。洋楽から邦楽まで、色んな音楽に精通していて、僕が好みそうな音楽を色々と教えてくれました。
そうやって、友人Mと交流を深めていく中で、どういう流れになったのかはもう覚えていないですが…多分、あっちがこっちに歩み寄ってくれた部分が大いにあったと思うのですが、まぁ色々あって、いつからか2人で組んでサークルのライヴに出ることが毎回の恒例になりました。まぁ、本当に上手なプレイヤーだったので、自分にはもったいない、出来過ぎた相方でした。
■友人Mとライヴに出る時には、いつも同じアーティストの曲をカバーしていました。それが、”GOING UNDER GROUND”というバンドです。
最近の若い人たちは…知っていますかね?おそらく、”かつて若かった”世代の人たちの方が、知っている人が多いんじゃないかと思います。
改めて調べてみると、GOING UNDER GROUNDのメジャーデビューは2001年なので、(2024年現在で)メジャーデビュー23周年を迎えるようですが、元々は中学生の幼なじみで結成されたバンドであり、GOING UNDER GROUNDと名乗り始めたのが1994年のことで…これは実に30年前のこと。長く活動しているバンドだということが分かると思います。
ちなみに、今も活動はしていますが、第一線で活躍をしている…とは言い難い感じではあります。GOING UNDER GROUNDは、元々は5人組のバンドでしたが、現在はそのうちの2人が抜けて、3人組で活動をしています。5人組の頃のバンドが特に好きだったので、今はやっぱり物寂しく思います。
今でこそ、熱心にGOING UNDER GROUNDは聴くことはなくなっちゃいましたが、僕にとって、GOING UNDER GROUNDは、青春の終わりに出会った大切なバンドです。幼なじみのメンバーが脱退しても、それでも解散をすることなく続けていくそのバンド像は、何かをずっと諦めずに続けていくことの大切さを教えてくれるような気がしています。
■GOING UNDER GROUNDの魅力は、たくさんあるんですけど、その一つとして、かつてはキーボードメンバーが所属していたのですが、そのキーボードの音が、とても良い味を出していました。
何でも、先程紹介したように、GOING UNDER GROUNDは中学生の幼なじみで結成されたバンドだったのですが、元キーボードメンバーの伊藤洋一さんは、元々鍵盤を触ったことすらなかったようなのですが、どうしてもGOING UNDER GROUNDに入りたいということで、猛練習をしたそうなのです。
時にバンドの音楽を盛り上げ、時に情景を浮かび上がらせるように引き立てる…本当にGOING UNDER GROUNDの音楽に、キーボードは無くてはならないものでした。
僕が知らなかっただけだと思いますが、ロックバンドにキーボードメンバーが居ることについては、当時は珍しいなと思ったことを覚えています。というより、そういうバンドがあること自体、初めて知ったほどでした。今でも、自分の中でGOING UNDER GROUNDは、”キーボードロック”の走りだと思っています。
残念ながら現在は、キーボードメンバーは脱退してしまっているのですが、過去の作品では、その音源を余すことなく聴くことができるのでおすすめです。
■さて、そんなGOING UNDER GROUNDと僕が出会ったのは、大学1年生の時でした。件の、サークルで活動をし始めた頃のことです。
古い記憶なので曖昧なんですけど、確か夜中に「カウントダウンTV」を見ていた時だったと思います。TVから、何やら印象に残る歌が流れてきました。
それが、GOING UNDER GROUNDの【トワイライト】という曲でした。【トワイライト】知ってますかね?NHKでやっていた「あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑」というテレビ番組の主題歌だったので、GOING UNDER GROUNDの楽曲の中でも、ひょっとしたら一番くらい、よく知られている曲だと思います。
この曲をきっかけに、GOING UNDER GROUNDを好きになって、特に大学時代は、その活動を熱心に追うことになるわけです。そして、友人Mも、確か同時期にGOING UNDER GROUNDを知った事で意気投合し盛り上がり、まさに【トワイライト】という楽曲を弾き語り風にアレンジカバーして、サークルのライヴで披露すべく、コンビを組むことになったのです。こう見えて、僕らのGOING UNDER GROUNDカバーは、割と評判良かったんですよ。
僕の中で【トワイライト】は、GOING UNDER GROUNDを知ったきっかけの曲であり、GOING UNDER GROUNDで一番好きな曲であり、また友人Mと初めてカバーした曲であり(自分の大学時代最後のライヴでも、この曲を披露しました)…とにかくめちゃくちゃ思い入れのある楽曲なんです。
■ということで、ここからは、その【トワイライト】という曲を少し紹介してみたいと思います。
GOING UNDER GROUNDの音楽は…その当時はこういう言葉があったのかはよく分かりませんが、”胸キュン”というか”エモい”というか、何かそういう形容が似合うような、胸がぎゅっとなって、センチメンタルな気持ちにさせられる感じの音楽でした。
最近のGOING UNDER GROUNDの音楽を聴いた感じでは、どちらかというと、結構渋めと言うか男くさいというか、まぁ年齢も重ねていることですし、男性3人ということもあって、そうなってくるのは必然のような気もしますが、そういう感じになっているのかなと思います。これについては、どちらが良いとか悪いとかではありませんが、やはり先程のキーボードロックからの変化の影響が大きいんだろうなと思います。
【トワイライト】についても、キーボードありバージョンとなしバージョンを聴いて比べてみたのですが、全然雰囲気が違って聴こえます。自分が慣れ親しんでずっと聴いてきたこともありますが、キーボードの音が聴こえてくる方が好みではあります。
夕暮れや日暮れなどの黄昏時を意味する”トワイライト”と、そう名付けられたこの曲…キーボードの演奏がとても映えて、そういう朝とも夜ともつかない、曖昧な景色を表現していました。
■【トワイライト】は、まずボーカルの松本素生(下の名前は、これで”そう”と読む…珍しい名前ですよね)の弾き語りから始まります。
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鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー
眠れぬ夜を旅する声
瞳を閉じて広がった世界
あぁ そうかあれは…
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すごい詩的な表現ですよね。何気に、この曲でここの歌詞が一番印象に残っているかもしれません。特に出だし…”鉄塔のガイコツ ネオンのゼリー”と、独特な比喩ではあるけど、景色が浮かんでくるような表現だなと思います。
そこから静かな雰囲気は一変して、バンドの演奏が加わって賑やかになってきます。
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風と稲穂の指定席へ座る
上映間近のアカネ空
半袖じゃちょっと寒くなってきたな
待ちぼうけいつも僕の方だ
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”アカネ空”という言葉に”上映間近”という言葉をくっつけたのは、めっちゃ秀逸ですよね。”指定席”という表現もそうですけど、映画が始まる前みたいに、”アカネ空”が空に現れるのを待っているのでしょう。
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灯りが落ちてストーリーを探す
おかしいな!?夜は暗いままだ
気付けば僕と君しかいない
風と稲穂のその中で
スクリーンに何度もたずねてみれば
小さな声で「君の出番だよ」
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”僕”が待っていたところに”君”がやってきて、灯りが消えて、次第に暗くなってきます。それで”僕”は、何かロマンチックなことが起こることを待っています。
映画のワンシーンが始まるように、劇的な展開を待っている…先程の歌詞を繋げると、”アカネ空”の上映を待っている場面でしょうか。しかし、そんなことも起こらないまま、時間だけが過ぎていきます。
そこで”僕”は気付くわけです…自分は映画の上映を待っている”観客”なのではなく、自分自身がこの物語の主人公なのだと。
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主役が君と僕の脇役のいないストーリー
少しだけ勇気を出した 頼りない声しぼって
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”主役が君と僕の脇役のいないストーリー”という言葉が、何とも素敵ですよね。何かが起こるのを待っていた、まるで映画の次の展開を待っていた”僕”や”君”こそが、その物語の主人公だったのだと。
そして、”少しだけ勇気を出した 頼りない声しぼって”という表現…自分のセリフによって、この物語を動かしていく、という風につながっていきます。
…という風に読んでいくと、一つの情景としては、”僕”が”君”に恋の告白かプロポーズをしている、という場面が思い浮かんできそうです。他人任せ、何か任せにするのではなく、物語を自分の想いを、自分の言葉で相手に伝えることで、この物語を動かそうとしているのでしょう。
■ただ、最後まで歌を聴いていくと、最後のクライマックスは、何か少し違うことを歌っているのかなとも思うんですよね。
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約束しよう僕らは それぞれの地図を持って
旅立つ事はきっと さよならなんかじゃなくて
いつだって主役は君と僕で 期待とプライド背負って
主役は君と僕で それぞれほら違うストーリー
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結局どうなんでしょうね、最後の歌詞は、別れの場面にも読み取れなくもないです。ここで”僕”と”君”は離れてしまい、”僕”と”君”はそれぞれ自分の物語の主人公として生きていこう、と約束しあう場面として読み取れる気がします。
だから、ここを起点にこの歌を考え直してみると、”僕”と”君”は”風と稲穂”の場所で、お別れをしたのかも知れません。想い合っている2人は、離れてお互いを想いつつも、自分の物語を大切に生きていこうと。
だから、どっちとも取れそうな気がしますが、こういう曖昧な感じも、何か不思議な余韻を感じます。
PVについては、現在では広島で活躍されている、ローカルタレント(俳優?モデル?)のさいねい龍二さんが出ています。ちなみに、GOING UNDER GROUNDのメンバー5人が、PVのどこかで出ています。
このPVの物語についても、【トワイライト】の歌詞の物語と重なる部分がありますね。このPVも印象に残っていて、この時代には珍しい(?)、ドラマ仕立てというか、物語PVの走りだったのかな、とも思います。