地下鉄でひとりきり ぼんやりベンチにもたれて

Twilight

 

■この記事は、もともと2020年に書いたものですが、心機一転ということで、復刻版として手直しをして載せてみます。

 

なので、この記事の時間軸としては、2020年のことになるわけですが(正確には2020年の年の瀬)、その頃はちょうどコロナ禍が始まった頃のことでした。

 

コロナ禍によって、緊急事態宣言が出されて仕事や外出が一番制限されていたのがこの時期になりますが、その後に爆発的にコロナが拡がったことを今思うと、この時期の自粛は何だったんだろう?と思うばかりです。

 


■さて、そういう時期の話です。

 

その頃に、何故か急に、”シューゲイザー”というジャンルの音楽が気になって、自分なりに調べていたことがありました。

 

シューゲイザー”といジャンルの音楽についても、ろくに分かっていないまま、日本のシューゲイザーのジャンルに当てはまると思われるバンドをネットで調べていき、聴ける音源があれば聴いてみたりしました。

 

最初こそは、”シューゲイザー”というジャンルにこだわっていたのですが、そこから脱線していって、色んなバンドの音楽を聴いていきました。そのどこかで出会ったのが、Subway Daydreamというバンドでした。

 

誰しも、何年か、何十年か、に1曲出会う、自分の心にパズルのピースみたいにカチッとはまる名曲があるんじゃないかと思います。安易な言い方になっちゃいそうですが、”奇跡の1曲”とでも言いましょうか、そういう曲があると思います。

 

2020年、僕はそういう”奇跡の1曲”に出会いました。その1曲こそ、Subway Daydreamというバンドの【Twilight】という曲でした。

 

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■まず、とにかくイントロ(や間奏、アウトロ)でなっているギターのメロディー、これが素晴らしいんです。

 

初めて聴いた時に、もうすでに、あ、好きだ!てなりました。ノイジーなギターの音をバックに、どこか遠くで鳴っている鐘の音みたいに聴こえてくる、クリアなギターのメロディーが聴こえてくるんですけど…これはアコースティックギターエレアコ)で弾いているんですかね?どこか、懐かしく感じるようなギターのメロディーで、いきなりこの曲に引き込まれていきます。

 

この辺りだけ聴くと、シューゲイザーっぽくも聴こえてくるんですけど、ここからさらにボーカルが入ってくると、また雰囲気が一変します。

 

ボーカルのたまみさんの声は、何て言ったら良いんだろう…どこにでもありそうな声にも聴こえるし、唯一無二のようにも思えるし…でも、すごく素直でまっすぐで、作らずに歌っている感じが、とても好感が持てます。本当に、歌うことが好きなんだな!っていうのが伝わってくる、すごく魅力的な声だと思います。

 

特に、低音部分の声が好きですね、もちろん高音の頑張って歌っている感じも好きなんですけど、低音が魅力なボーカルだという印象です。

 

シューゲイザーっていうと、個人的なイメージとしては、ボーカルはボソボソと歌っているっていうイメージだったので、クリアに聴こえてくるたまみさんの声で、シューゲイザーとは一線が引かれます。ドリームポップ、というジャンルがあるそうですが、この曲に当てはまるのではないでしょうか。言い得て妙ですね、まさに、夢か幻でも見ているような、独特で心地よい浮遊感を感じます。

 


■歌詞については、素直に歌詞を読むと歌っていることはごく自然で、大好きな人のことを思いだして、会いたいという想いが溢れて、(おそらく)思い切って地下鉄にでも乗って会いに行く、みたいな物語をイメージしました。

 


消えかけた言葉を ひとつひとつ数えて
ぽつりとこぼれるように
地下鉄でひとりきり ぼんやりベンチにもたれて
最後のベルが聞こえたら 街に出よう

 

出だしがこんな感じなのですが、まずここに”地下鉄”という言葉が出てきています。

 

バンド名の”Subway Daydream”…直訳すると、”地下鉄の白昼夢”と妙な感じになりますが、”地下鉄”という言葉で安易に繋げて、この【Twilight】という曲を、バンドのテーマソングというか、自己紹介ソングであるように思って聴いています。

 

地下鉄、という言葉からは、どこか閉じ込められている感じがしますが、そこからどこでも行くことができる、という希望にもなっているのでしょうか。だから、そういう閉じた世界から抜け出す夢を見ている、というイメージが、Daydream(白昼夢)という言葉に繋がります。

 


■歌詞についてもっと読んでいくと、個人的には、主人公の気持ちと”明るさ”がシンクロしているのかな、と思いました。

 


地下鉄でひとりきり ぼんやりベンチにもたれて
最後のベルが聞こえたら 街に出よう
まぶしい心で 暗がりも照らすほどに

 

”地下鉄”は、暗くて閉じた場所の象徴、と捉えることができますが、さらにこの歌を聴いていくと、”あなた”のことをいつまでも思案している場所の象徴なのかな、とも捉えることができます。

 

そこから”街に出よう”…”地下鉄”と対比するように、”街”は明るく開けた場所として捉えることができるので、”あなた”のことをいつまでも思案して、寂しい想いを感じてるところから抜け出そう、ということのだと思います。

 


消えた灯りをつけて 夜風に飛ばされそう
迷子のままの私

 

2番のAメロですが、ここの表現も面白いですよね。”消えた灯りをつけて”、あなたが居ないことに対する寂しさを紛らわせてみても、結局はそれを、”迷子のまま”と表現しているんですよね。”夜風”という言葉も、ひとりぼっちの不安な気持ちを表していると考えられます。

 


うわの空 気がつけば 点滅した信号の下
街の灯りがすべて消えるなら 旅に出よう

 

続く歌詞がこんな感じです。”点滅”という言葉が、主人公の揺れ動く気持ちを表しています。そこからの、”街の灯りがすべて消えるなら 旅に出よう”と。結局主人公は、暗くて寂しくても、”あなた”への想いと対峙することを選ぶわけですよね。

 

物語は想像するしかありませんが、”地下鉄”という言葉があるので、例えば、そのまま地下鉄にでも乗って、衝動的にあなたに会いに行く、という物語なんかがイメージできます。

 

何かこんな風に考えていくと、そういうことを意図して書いているのかは分かりませんが、奇しくも、コロナ危機によって、どこにも行けなくなった、鬱憤した気持ちを表現しているようにも聴こえてきます。

Life Is Party 明日もずっと続くよって

andymori

 

andymoriというバンドがかつてありました。解散してしまって、今はもうありませんが、ある時期このandymoriというバンドにハマって、とても熱心に聴いていたことがありました。

 

andymoriを知ったきっかけをよく覚えていませんが、おそらく2010年の2月とか3月とかだったと思います。ちょうど2nd album『ファンファーレと熱狂』が発売されて、少し経った頃でした。

 

andymoriの楽曲を初めて聴いたのは、Youtubeでした。当時でも、ライヴ映像だったり、ミュージックビデオだったり、andymoriの楽曲が聴ける映像がたくさんアップされていたので、それを見て「良い曲ばっかりだ!」「カッコいいバンドだな!」と興味を持ちました。

 

そしてすぐに、CDショップに赴き、とりあえずその時に発売されていた、1st album『andymori』と2nd album『ファンファーレと熱狂』を手に入れたのです。

 


■解散してしまったのはずいぶん前になりますが、andymoriの楽曲を僕は今でもよく聴いています。

 

andymoriのボーカルだった小山田壮平さんは、今でもソロで活動していたり、ALというバンドを組んで活動していたりしていますが(ただし、ALに関しては、最近全く音沙汰がないが、どうなってんだ!?)、やっぱり自分にとってはandymoriが特別なんですよね。

 

それは、andymoriが壮平さんの音楽を知ったきっかけだからという理由、単純にandymoriの楽曲が壮平さんの作った楽曲で一番好きだからという理由、壮平さんだけでなくメンバー自体が好きだったからという理由など色々あるんですけど、それ以上にandymoriを特別なものと感じている、ある奇跡的な出来事がありました。ちょっと紹介してみますね。

 


■あれは、2011年のことです。

 

2011年6月8日、andymoriは3rd album『革命』を発表しました。この頃は、初期メンバーであったドラムスの後藤大樹さんは抜けて、新しく岡山健二さんに変わっていました。

 

そういう時期の、ある日の仕事帰りのことです。まさに、その発売してすぐのアルバム『革命』をウォークマンに録り込んで、それを聴きながら、どこかでご飯を食べて帰ろうと、駅の中を歩いていたんです。

 

そしたらですよ!

 

何と、その駅にandymoriのメンバーお三方がいるではありませんか!言葉通りですが、小山田壮平さんと、藤原寛さんと、岡山健二さんのお三方が、普通に立っているのです。いわゆる、”みどりの窓口”っていうんですかね、新幹線とかのチケットを買うところの前でしたが、おそらくマネージャーさんか誰かが、チケットを買うのを待っているような感じでした。壮平さんは、何故か小さなギター(ミニギター?ウクレレ?)を、ポロンポロンと鳴らしながら立っていました。

 

今まさに、イヤフォンから聴こえてくる音源の主たちがそこに立っているなんて、何という奇跡だって、見つけた時は、もうそれはびっくりでした。それから僕は、一旦そこを通り過ぎて戻ってみたり、しばらく遠くから眺めて見たりした後、意を決して話しかけたのです。

 

「すみません、andymoriのお三方ですよね!ファンです!(ウォークマンを指さしながら)『革命』今聴いてます!」

 

そういう感じで話しかけたと思います。そして、少しだけそこで立ち話をすることができたんです。

 

しっかりと、自分がandymoriのファンであることをお伝えし、その年のSETSTOCK(広島にかつてあった夏フェス…)にandymoriが出るので、それを目当てに行くことをお伝えしたり、何故かクロマニヨンズの話をしたりしました。

 

それから、実は僕と壮平さんは同じ年の生まれ(1984年生まれ)なのですが、「壮平さん!僕、壮平さんと同い年なんですよ!」と言ってみたら、「おぉー!1984!」と言いながら握手してくれたんです!思ったより、手がごつごつしていた感じを覚えています。あれだけギターを力強く弾くからかなぁとか思ったりしました。

 

お三方とも、気さくで良い人たちでした。当たり前ですが、自分が好んで聴いているアーティストも、普通に日常に存在してるんだなってことを実感しました。本当に奇跡的な出来事でしたが、そういうことがあって、勝手に壮平さんは友達だと思っています笑

 


■そのあと2011年は、SETSTOCKに行ってandymoriのライヴを生で初めて見ることができたり、その後、ワンマンライヴにも行くことができました。

 

ワンマンライヴに関しては、ある日いきなり、大学時代のサークルの後輩…それも女性に誘われたんですよ!ちょっと、心躍りました。「先輩andymori好きなんですよね、チケット譲ってもらったんで行きませんか?」って感じでした。

 

しかも、初めての”遠征”っていうんですかね、はるばる広島から大阪まで遠征したんです。Zepp Osakaで行われた「秋の楽園ツアー」という、先述したアルバム『革命』のリリースツアーでした。

 


■結局、andymoriが活躍したのは、2008年にデビュー作『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』を発表して、2014年にラストライヴを行ったので、実に6年という短い時間だったんですね。

 

そんな短い時間だったけど、非常に濃厚だったなと思っています。僕は歳を取ってしまって、現在ではもうそこから10年くらいが経ってしまって、もうその時のような経験はできないんだろうなって思うと少し寂しい気もするけど、ひとつのバンドにあれだけ夢中になれた時間はかけがえのない思い出です。

 

ということで、せっかくなので、自分の一番好きなandymoriの楽曲を紹介してこの記事を締めようと思います。

 


■僕がandymoriの楽曲で一番好きなのは、【Life Is Party】という曲です。

 

youtu.be

 

andymoriを知った頃の楽曲やアルバムには、特別な思い入れがあるのですが、この【Life Is Party】は、1st album『andymori』に入っています。まさに、僕が最初にandymoriを知った頃から聴いていた曲です。

 

まず、印象的なギターの音だけでのイントロで曲が始まります。曲の出だしではあるんですけど、ここを聴くと、何かが終わっていくような物寂しさ…例えば長く続いた夏の終わりだったり、学生時代などの青春の終わりだったり、タイトルになぞらえると、パーティーの終わりだったり、そういう終わりに、自分が取り残された寂しさみたいな感覚になります。

 

そういう余韻は、すぐに轟音で鳴るギターとドラムの音に飲み込まれて、はっと目が覚めるように曲が始まります。何となく、そういう終わっていったものに対して、回想シーンに入っていくような錯覚に陥ります。

 


昔インドの偉い人 サフラン色の風の中
Life Is Maya 呟いた
勘違いの連続が僕らの人生なら
Life Is Party 奈多の海岸
パラグライダー飛んでいった

 

出だしの歌詞です。後半部分は、リズムに乗って歌ってみると、ちょっと言葉遊び的な要素もあるのかなという感じです。

 

印象的なインド人の下りの部分、”Life Is Maya”って何だ?って感じですが、調べてみると、サンスクリット語(古代インドで使われていた言語でしょうか)にmaya(マーヤー)という言葉があり、意味は”幻像”、”現実に存在すると考えられる物質世界が幻影であるとするもの”というものです。

 

その意味を安易にですが当てはめてみると「人生なんて幻像みたいなものだ!」ってことなんですかね。何となく、タイトルになっている”Life Is Party”に通じているような気がします。

 

先述した、イントロから感じる何かが終わっていくことに対して感じる物寂しさ…”Party”という言葉は、どうしても楽しいものと考えてしまうので、楽しいことも、喜ばしかったことも、期待して待っていたことも、あっという間に過ぎていくというそういう考え方のようなものが、”Life Is Maya”や”Life Is Party”という言葉に込められているんでしょうか。

 

そして、2番のAメロには、

 


あの日の空は言うさ あの日の空は言うさ
いつの日か悲しみは消えるよって

 

という風に、悲しみに対しても、いつか消えていくものであると捉えているようですね。

 


10年たったらおもちゃもマンガも捨ててしまうよ
Life Is Party 気にしないでいいから

 

この10年がどういう期間を指すのかは分かりませんが、例えば、中学生で3年間、高校生で3年間、大学生で4年間、合わせて10年と考えると、いわゆる社会に出るまでの青春時代に当たります。

 

今まで宝物のように持っていた、おもちゃやマンガも、少しずつ手放していって大人になっていく…そういう意味では、楽しいことは終わっていくという寂しさだけが残るような気がします。

 


10年たったら旅にでよう 南の国がいいな
みんなきっと驚くって 絶対ね

 


あの日の空は言うさ あの日の空は言うさ
Life Is Party 明日もずっと続くよって

 

曲の終わりはこんな感じで締めくくられます。大人になってもそれなりに楽しいことはあるわけで、結局のところ、楽しいと感じることが移り変わっていくだけなんですかね。そうやって、終わって、また何かが始まって、また終わって、また何かが始まって…このループが人生だよと、そういうことを歌っているのかなというのが、個人的に辿りついた考察でした。

 


■そして、これは個人的に核心というか、最終的に行き着いた答えなのですが、この曲自体がandymoriそのものを表しているように思えるんです。

 

2014年10月15日、andymori日本武道館にてラストライブを行ったのですが、実に41曲も披露したそのラストライヴの大トリを飾った曲が、この【Life Is Party】だったのです。ラストライブの最後の曲ですから、andymoriにとって特別な曲であると考えることができそうです。

 

先述したとおり、andymoriが活躍した時期は、2008年~2014年…およそ6年間ですか、この時間を長いと捉えるか短いと捉えるかですが、まぁ長く活動するバンドには10年20年と活動しているバンドもたくさんあるので、それと比べると、短命なバンドと言えるかもしれません。

 

andymoriの、(特に)初期の頃の楽曲には、言葉をまくしたてるように歌っている曲も多く、曲の長さもそんなに長くはありませんでした。

 

活動の長さ自体も、1曲1曲のandymoriの楽曲も、あっという間に始まって終わっていく…そういうところは全て、”Life Is Party”という思想に集約されているのではないでしょうか。